【2026年最新】ランサムウェアで工場が停止したら?IPAの経営者向けハンドブックから学ぶ対策と備え

「もし明日、会社の業務システムがすべて使えなくなったら?」

中小企業の経営者や管理職の方は、こんなことを考えたことがあるでしょうか。

受注情報が確認できない。

在庫数がわからない。

製造指示書を発行できない。

こうした状態が突然発生すると、製造業では生産や出荷に大きな影響を与える可能性があります。

2026年9月8日、独立行政法人情報処理推進機構(IPA)は、「ランサムウェア被害から学ぶ教訓集 ~経営者のためのランサムウェア対策ハンドブック~」を公開しました。

この資料は、実際にランサムウェア攻撃の被害を受けた国内の複数の組織への聞き取りをもとに作られています。

注目したいのは、技術的なセキュリティ対策だけでなく、経営者の判断や事業の継続についても詳しく取り上げている点です。

今回は、ランサムウェアの仕組みから、中小製造業が今から準備しておきたい対策までを、DX担当ちゃま男と先輩の会話を交えながら解説します!

目次

ランサムウェアとは?会社のデータを使えなくするサイバー攻撃

DX担当 ちゃま男

先輩!ランサムウェアに感染すると、会社のパソコンが全部使えなくなるんですか?

ちゃま男の先輩

ランサムウェアは、会社のデータを暗号化して使えなくするなどして、身代金を要求する攻撃に使われるものなんだ。
すべてのパソコンが必ず使えなくなるわけではないけれど、重要なサーバーが被害を受けると、広い範囲で仕事が止まる可能性があるよ。

暗号化とは?

暗号化とは、データを特定の方法で変換し、復号するための情報がなければ内容を読めない状態にすることです。

通常は情報を保護するために使われる技術ですが、ランサムウェアでは攻撃者が悪用します。

例えば、会社の共有サーバーに保存されている受注情報や設計図面などが暗号化されると、通常どおり使用できなくなる可能性があります。

最近はデータを盗む攻撃にも注意が必要

近年のランサムウェア攻撃では、データを暗号化するだけでなく、事前に機密情報を盗み出し、公開すると脅迫する手口も問題になっています。

これは「二重恐喝」と呼ばれます。

つまり、データを復旧できたとしても、情報漏えいの問題が残る可能性があるということです。

IPAが2026年に公開した経営者向けハンドブックとは?

IPAは2026年9月8日、実際にランサムウェア被害を受けた国内の組織から得た教訓をまとめた資料を公開しました。

2026年10月16日にも更新されています。

ハンドブックでは、主に次のような内容が取り上げられています。

  • 経営者による迅速な意思決定
  • 事故発生時の対応体制
  • 事業継続計画(BCP)の整備
  • 個人情報を含むデータの把握
  • 情報漏えいへの対応
  • バックアップやログの管理
  • セキュリティ専門会社との連携

この資料が重要なのは、被害が起きたときに何をすればよいかだけでなく、被害が起きる前に経営者が何を決めておくべきかを示している点です。

出典:IPA|ランサムウェア被害から学ぶ教訓集

ランサムウェアで工場が停止すると何が起こる?

例えば、ある製造会社がランサムウェア攻撃を受け、生産管理システムが利用できなくなったとします。

その場合、どのような影響が考えられるでしょうか。

① 受注情報や生産計画を確認できない

生産管理システムにアクセスできなければ、どの製品を、いつまでに、何個製造する必要があるのか確認できなくなる可能性があります。

紙などに情報が残っていなければ、現場へ正確な製造指示を出すことも難しくなります。

② 在庫があっても出荷できない

製造業では、倉庫に完成品があっても、在庫情報や出荷先、納品数量が確認できなければ出荷できない場合があります。

実際にIPAの教訓集でも、生産管理システムが停止すると、在庫があっても納品できない事態になることが指摘されています。

③ 取引先への影響が広がる可能性

部品メーカーが出荷できなくなると、その部品を使用する別のメーカーの生産にも影響する可能性があります。

特に、納期が厳しい製造業では、システム停止による影響が自社だけにとどまらないこともあります。

④ 復旧作業と通常業務の両立が難しくなる

攻撃を受けた場合、システムの復旧だけでなく、被害調査、取引先への説明、顧客対応など、多くの作業が同時に発生します。

IPAの教訓集では、こうした対応が情報システム部門に集中し、復旧作業の負担が増えたケースも紹介されています。

※以上はIPAの資料を踏まえた製造業への影響例であり、すべての被害企業で同じ状況が発生するわけではありません。

バックアップを取っていれば安心なの?

DX担当 ちゃま男

先輩!でも、会社のデータをバックアップしておけば、もし攻撃されても元に戻せますよね?

ちゃま男の先輩

バックアップはとても重要だよ。
でも、バックアップがあることと、すぐに仕事を再開できることは別なんだ。

バックアップまで使えなくなる可能性がある

例えば、会社の共有サーバーとバックアップ装置が、常に接続された状態になっているとします。

攻撃者がその両方にアクセスできてしまえば、バックアップも破壊されたり暗号化されたりする可能性があります。

そのため、通常のシステムから簡単に変更できないバックアップを用意することが重要です。

バックアップがあっても復旧に時間がかかる場合がある

データだけ戻せても、業務システムやサーバーの設定が復旧していなければ、仕事を再開できない場合があります。

また、攻撃の原因が解決されていない状態でシステムを戻すと、再び被害を受ける恐れもあります。

そのため、バックアップの取得だけでなく、実際に復元できるかを確認する必要があります。

情報を盗まれていた場合、バックアップでは解決できない

さらに、攻撃者が事前に顧客情報や技術資料を盗み出していた場合、バックアップから復旧しても、情報漏えいの問題は解決しません。

被害範囲の調査や、関係者への説明などが必要になる可能性があります。

IPAが強調する「経営者の判断」の重要性

今回のハンドブックでは、経営者が事前に意思決定の仕組みを整えることが重要だと示されています。

例えば、ランサムウェアの被害を受けたときには、次のような判断が必要になります。

  • どの業務を停止するか
  • どのシステムから復旧するか
  • 取引先にいつ連絡するか
  • 顧客への説明を誰が行うか
  • 外部の専門会社へどのように支援を依頼するか
DX担当 ちゃま男

こうして見ると、IT担当者だけで判断できることではないですね。

ちゃま男の先輩

その通り。
例えば、システムを止めるかどうかは、工場の生産や取引先への影響にも関わるよね。
だから、経営者とIT担当者、現場の責任者が協力して判断する必要があるんだ。

身代金を支払えば解決するとは限らない

IPAは、攻撃者に身代金を支払っても、データが復旧されたり、盗まれた情報の公開が止まったりする保証はないと説明しています。

そのため、攻撃が発生した際の対応方針や専門家への相談体制を、平常時から整理しておくことが重要です。

中小製造業が今から取り組むべき5つの対策

優先度1:停止すると困る業務システムを把握する

まず、会社で使用している主要な業務システムを洗い出しましょう。

例えば、次のようなものです。

  • 受注管理システム
  • 生産管理システム
  • 在庫管理システム
  • 品質管理システム
  • 会計・経理システム
  • 社内ファイルサーバー

そのうえで、それぞれが停止した場合に、どの業務へ影響するのかを整理します。

優先度2:バックアップと復元方法を確認する

重要なデータについて、バックアップの保存先、取得頻度、復元方法を確認しましょう。

可能であれば、普段利用するネットワークから切り離したバックアップや、簡単に書き換えられない保存方式も検討します。

また、実際に復元テストを行い、問題なくデータを取り出せるか確認することが重要です。

優先度3:システムが停止した場合の業務継続方法を決める

例えば、生産管理システムが停止した場合、紙の指示書や別に保管した情報を使って、最低限の業務を継続できるでしょうか。

受注情報や出荷先の情報を確認できる代替手段はあるでしょうか。

こうした対応をあらかじめ整理しておくことが重要です。

これを「BCP(事業継続計画)」といいます。

BCPとは、災害やサイバー攻撃などで業務が停止した場合でも、重要な仕事を継続・再開するための計画です。

優先度4:社内の緊急連絡体制を整える

事故発生時に、誰が何を担当するかを決めておきます。

担当主な役割
経営者事業継続・対外対応の判断
IT担当者・保守会社被害調査・技術的な対応
工場責任者生産への影響確認・代替業務の判断
営業担当者取引先との連絡・納期調整
総務・管理部門社内連絡・資料管理・必要な報告

中小企業では、一人が複数の役割を担当する場合もあります。

その場合でも、担当者と連絡先を明確にするだけで、事故発生時の混乱を減らせます。

優先度5:基本的なセキュリティ対策を徹底する

ランサムウェアの侵入を防ぐためには、日常的な管理も重要です。

例えば、次のような対策です。

  • OSやソフトウェアの更新
  • VPNなどのリモートアクセス機器の管理
  • 多要素認証の利用
  • 不要な管理者権限の削減
  • 不審な通信や操作を検知する仕組みの整備
  • ログの保存と定期的な確認

必要に応じて、EDRと呼ばれるセキュリティ対策製品の導入も検討します。

EDRとは、パソコンやサーバーで発生する不審な動きを監視し、攻撃の発見や調査を支援する仕組みです。

ただし、EDRを導入するだけで安全になるわけではありません。検知した際に対応できる運用体制も必要です。

経営者が確認したい「3つの質問」

ここまでの内容を踏まえ、経営者の方は次の3つを社内で確認してみてください。

① 明日、生産管理システムが停止しても、最低限の出荷業務を継続できますか?

受注情報、在庫情報、納品先情報などを確認する代替手段があるかを考えます。

② バックアップから実際に復旧した経験はありますか?

バックアップを取っているという報告だけでなく、復元できることを確認しましょう。

③ サイバー攻撃が起きた場合、最終的に誰が判断しますか?

システム停止、取引先への説明、外部専門会社への依頼など、経営上の判断を行う責任者を決めておく必要があります。

この3つの質問に答えられない場合は、事業継続の観点から見直す余地があるかもしれません。

まとめ|ランサムウェア対策はIT担当者だけの仕事ではない

今回IPAが公開したハンドブックは、実際にランサムウェア被害を経験した企業の教訓をもとに、経営者が果たすべき役割を示しています。

ランサムウェア対策というと、ウイルス対策ソフトやバックアップなど、ITの対策を思い浮かべる方も多いでしょう。

しかし、本当に重要なのは、システムが使えなくなったときに、会社としてどう行動するかを決めておくことです。

特に製造業では、システム停止が生産や納期に直結する可能性があります。

「サイバー攻撃を受けないための対策」と「攻撃を受けても事業を継続するための対策」の両方を準備すること。

それが、これからの中小製造業に求められる重要な取り組みです。

まずは、自社の重要な業務システムと、停止時の対応方法を確認するところから始めてみましょう。

参考情報

※本記事は2026年11月3日時点の公開情報をもとに作成しています。実際に被害が発生した場合は、専門家や関係機関と連携し、被害状況に応じた判断を行ってください。

この記事が気に入ったら
いいねしてね!

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
目次