【2026年最新】日本企業とAWS・Azureの障害対応は何が違う?謝罪・SLA・Design for Failureを解説

日本企業の謝罪会見とAWS・Azureのクラウド基盤を対比し、障害対応やSLAの違いを表現した画像

「大規模障害が起きると、日本企業は社長が謝罪会見を開く。一方、海外のクラウド企業は契約に基づいて対応する」

最近、X(旧Twitter)では、このような日本企業と海外クラウド企業の障害対応の違いが話題になっています。

2026年11月2日には、GMOインターネットグループが不正アクセス問題について記者会見を開き、経営トップが謝罪しました。

一方、AWS(Amazon Web Services)やMicrosoft Azureなどの海外クラウドサービスには、障害時の補償条件を定めた「SLA」という仕組みがあります。

では、日本企業と海外企業では、障害への考え方が根本的に違うのでしょうか?

実は、「日本企業は謝罪、海外企業は契約だけで対応」という理解は正確ではありません。

どちらも障害の原因説明や再発防止に取り組んでおり、契約に基づいた補償の仕組みも存在します。

今回注目したいのは、海外のクラウド設計で重視される「Design for Failure(障害を前提に設計する)」という考え方です。

今回は、DX担当ちゃま男と先輩の会話を交えながら、実際の企業の対応、SLAの仕組み、中小企業が準備すべき対策をわかりやすく解説します!

目次

日本企業と海外クラウドの障害対応は本当に違う?

DX担当 ちゃま男

先輩!日本ではシステム障害が起きると社長が謝罪会見を開くイメージがあります。
でも、AWSみたいな海外企業は、契約に基づいて返金するだけなんですか?

ちゃま男の先輩

必ずしもそうではないよ。
日本企業でも契約に基づいて返金することがあるし、AWSなども障害の原因や再発防止策を公表しているんだ。
ただ、クラウドサービスでは「障害が起きた場合にどこまで補償するか」をSLAで定めていることが多いんだよ。

障害対応は3つに分けて考えるとわかりやすい

企業の障害対応には、大きく分けて3つの要素があります。

対応主な内容
① 説明責任障害の状況、原因、影響範囲を説明する
② 補償・契約上の責任契約条件や個別の判断に基づいて補償する
③ 復旧・再発防止システムを復旧し、再び起こらないよう改善する

謝罪会見は、主に説明責任に関係します。

SLAは、サービスの稼働水準や補償条件に関係します。

そしてDesign for Failureは、障害が発生した場合の影響を抑える設計思想です。

これらは対立する考え方ではなく、本来は組み合わせて考える必要があります。

実際の企業はどう対応した?KDDI・GMO・AWS・Azureを比較

① KDDI|2022年の大規模通信障害では謝罪と返金を実施

2022年7月2日、KDDIで大規模な通信障害が発生しました。

障害の影響は約61時間に及び、多くの利用者が音声通話やデータ通信を利用しにくい状態になりました。

KDDIは記者会見などで謝罪し、障害の原因や再発防止策を公表しました。

さらに、契約約款に基づく返金に加えて、対象となる利用者へのお詫び返金として200円(税抜)を請求額から減額する対応も行いました。

つまり、日本企業であっても、謝罪だけではなく契約に基づく補償と追加的な対応を実施しています。

出典:KDDI公式|2022年7月2日に発生した通信障害について

② GMO|2026年の不正アクセス問題では謝罪と被害補償を表明

2026年10月、GMOインターネットが提供する「お名前.com デスクトップクラウド」で不正アクセスが発生しました。

同社は、システムのセキュリティ上の問題、不正アクセス、顧客情報の外部持ち出しを確認したと公表しています。

10月24日には、利用者への一律5,000円のお見舞金、対象となる不正取引の実現損失の補償、代替サービスの提供を発表しました。

そして11月2日、GMOインターネットグループの経営トップが記者会見を開き、被害者への謝罪と対応に関する説明を行いました。

報道によれば、過去にグループ内の専門家から指摘されていたセキュリティ上の課題に、十分に対応できていなかったことも認めています。

ここで重要なのは、今回の問題が単純なシステム障害ではなく、第三者による不正アクセスと情報流出を伴う事案だということです。

セキュリティ事故では、サービスの復旧だけでなく、情報漏えいの調査や二次被害への対応も必要になります。

そのため、一般的なクラウドの稼働率保証と単純に比較することはできません。

出典:

③ AWS|障害原因と再発防止策を技術的に説明

AWSでも、大規模な障害が発生することがあります。

例えば2025年10月19〜20日には、米国のバージニア北部リージョンで、データベースサービスのDynamoDBなどに障害が発生しました。

AWSは、その後の技術報告書で、DNS管理システムの不具合が発端になったことや、関連サービスへ影響が広がった仕組みを説明しています。

DNSとは、インターネット上でサービスの名前と接続先を対応させる仕組みです。

AWSは障害の経緯だけでなく、原因や再発防止に向けた対応についても公表しています。

つまり、海外クラウドが障害時に説明を行わず、返金だけで対応を終えているわけではありません。

出典:AWS公式|2025年10月のDynamoDB障害に関する技術報告

④ Azure|障害後の検証レポートを公開

Microsoft Azureでも、障害の発生後に原因や対応をまとめた「Post Incident Review(PIR)」を公開しています。

PIRとは、障害が起きた後に、その経緯、原因、影響、再発防止策などを整理する検証報告書のことです。

Microsoftは、広範囲に影響した障害について公開レポートを提供しています。

一方、影響を受けた顧客向けに個別の報告を行う場合もあります。

出典:Microsoft公式|Azureの障害情報と事後検証

4社の対応からわかること

今回取り上げた事例を整理すると、次のようになります。

企業事案の種類公表された主な対応
KDDI通信障害謝罪、原因説明、返金、再発防止
GMO不正アクセス・情報流出謝罪、被害調査、補償、代替サービス
AWSクラウド障害障害情報、技術報告、再発防止
Azureクラウド障害全般障害情報、PIR、SLAに基づく対応

※個別の事例を示したものであり、国内外の企業全体の対応を代表するものではありません。

DX担当 ちゃま男

こうして見ると、日本も海外も、説明や補償をしているんですね。

ちゃま男の先輩

そうだね。
むしろ大切なのは、どんな説明や補償があるかだけでなく、利用企業が自社の業務を守れる仕組みを持っているかなんだ。

SLAとは?クラウド障害でどこまで補償してもらえる?

SLAとは「Service Level Agreement」の略で、日本語では「サービス品質保証」や「サービス水準合意」などと呼ばれます。

サービス提供者と利用者の間で、サービスの稼働水準や、基準を満たせなかった場合の対応などを定めるものです。

例えばAWSのSLAでは

AWSのAmazon EC2という仮想サーバーサービスには、稼働率に関するSLAが設定されています。

リージョン内の複数のアベイラビリティゾーンにまたがって稼働させる場合など、所定の条件を満たした構成では、月間稼働率99.99%以上を目標とするSLAが設けられています。

ただし、すべてのEC2構成で同じ基準が適用されるわけではありません。

このようなSLAの基準を満たさなかった場合、条件に応じてサービスクレジットが適用される仕組みがあります。

サービスクレジットは損失の全額補償ではない

ここが重要です。

サービスクレジットとは、原則として将来のサービス利用料金に充当される金額です。

例えば、クラウド上のシステムが停止し、受注業務ができなくなったとします。

その結果、納期遅延や売上機会の損失が発生したとしても、SLAのクレジット制度がそれらの損失すべてを補償するわけではありません。

AWSのEC2向けSLAでも、障害に対する救済内容や請求条件が規定されています。

また、サービスクレジットを受け取るには、対象となる障害の日時やログなどを添えて申請する必要があります。

出典:AWS公式|Amazon Compute Service Level Agreement

AzureにもSLAに基づくクレジット制度がある

Microsoft Azureにも、サービスごとのSLAが設けられています。

障害の種類、影響範囲、契約経路などによって、補償の対象や申請方法が異なります。

そのため、障害が起きたら自動的に全額返金されるわけではありません。

DX担当 ちゃま男

えっ!クラウドが止まって会社が大損害を受けても、必ず全部補償してもらえるわけじゃないんですか?

ちゃま男の先輩

そうなんだ。
SLAはとても重要だけれど、会社の事業損失をすべて保証する保険とは違うんだよ。
だから、サービス提供者の責任だけに頼らず、自社でも障害への備えを考える必要があるんだ。

Design for Failureとは?障害が起こることを前提にする設計思想

ここで、クラウドの運用において重要な考え方が登場します。

Design for Failure(障害を前提にした設計)です。

これは、どんなに高品質なシステムでも故障や障害が起こる可能性を認め、その影響を小さくするように設計する考え方です。

従来の考え方との違い

例えば、工場の設備を想像してみましょう。

設備が絶対に故障しないように保守することは重要です。

しかし、どれだけ適切に保守していても、故障の可能性を完全になくすことはできません。

そこで、重要な設備には予備機を用意したり、設備停止時の代替生産方法を決めたりします。

ITシステムでも同じです。

例えば、次のような仕組みを整えます。

  • 一部のサーバーが故障しても、別のサーバーで処理を続ける
  • データを複数の場所へ保存する
  • 障害を自動検知し、復旧処理を実行する
  • バックアップから復元できることを定期的に確認する
  • 全システムが使えなくても、重要業務だけは継続できるようにする

AWSも障害からの復旧を重視している

AWSが公開している「Well-Architected Framework」では、信頼性を高める設計原則として、次のような内容を挙げています。

  • 障害から自動的に復旧する
  • 復旧手順をテストする
  • 障害による影響範囲を限定する
  • 障害に強い構成を設計する

つまり、システムを止めない努力だけでなく、止まった場合の復旧方法を設計段階から考えることが重要なのです。

出典:AWS公式|Well-Architected Framework 信頼性の設計原則

ただし、Design for Failureは海外企業だけの思想ではありません。

日本でも、BCPや冗長化、災害対策などを通じて同様の考え方が活用されています。

中小企業にとって重要なのは「クラウドが止まったらどうするか」

ここからは、中小企業の実務に置き換えて考えてみましょう。

例えば、ある製造業の会社がクラウド型の生産管理システムを利用しているとします。

ある日、そのクラウドサービスに障害が発生し、一時的にアクセスできなくなりました。

このとき、何が起きるでしょうか。

① 受注情報を確認できない

受注情報をクラウド上だけで管理している場合、受注内容や納期を確認できなくなる可能性があります。

② 製造指示書を発行できない

生産計画から製造指示書を発行する仕組みが停止すれば、現場へ新しい指示を出せなくなるかもしれません。

③ 在庫があっても出荷できない

在庫数量、出荷先、ロット情報などを確認できず、製品が完成していても出荷を判断できない場合があります。

ここで重要なのは、クラウドサービス自体の復旧を利用企業が直接コントロールできないことです。

だからこそ、システムが止まった場合でも、どの業務を続けられるようにするかを決めておく必要があります。

中小企業が知っておきたいRTOとRPO

障害対策を考える際に役立つのが「RTO」と「RPO」という2つの指標です。

RTO|どれくらいの時間で復旧する必要があるか

RTOは「Recovery Time Objective」の略で、目標復旧時間を意味します。

例えば、生産管理システムが停止した場合、4時間以内に復旧することを目標にする、といった考え方です。

RPO|どの時点までのデータを復旧する必要があるか

RPOは「Recovery Point Objective」の略で、目標復旧時点を意味します。

例えば、障害発生の1時間前までのデータを復旧できる状態にするといった考え方です。

指標意味設定例
RTO何時間以内に復旧したいか4時間以内
RPOどの時点までデータを戻したいか障害発生1時間前まで

※上記は説明用の仮の数値であり、すべての中小企業に推奨する基準ではありません。

RTOとRPOは、業務の重要性や停止時の損失、必要な投資額に応じて決めます。

例えば、受注管理と社内の掲示板では、求められる復旧時間が違うかもしれません。

すべてのシステムを同じ水準で守ろうとするのではなく、優先順位をつけることが重要です。

参考:NIST|RTO・RPOの定義

中小企業が今から取り組むべき5つの対策

DX担当 ちゃま男

先輩!でも、サーバーを何台も用意したり、複雑な仕組みを作ったりするのは、中小企業には難しくないですか?

ちゃま男の先輩

すべての会社が大規模な冗長化をする必要はないよ。
まずは、会社にとって止まると困る業務を把握して、現実的な対応方法を決めることから始めよう。

優先度1:止まると困る業務を整理する

まず、自社で使っている主要なクラウドサービスを一覧にしましょう。

例えば、次のような項目です。

  • サービス名
  • 利用している部署
  • 管理責任者
  • 停止した場合に影響する業務
  • 許容できる停止時間
  • 障害時の連絡先

社内で一覧を作るだけであれば、追加のソフトウェア費用をかけずに始められます。

優先度2:クラウドサービスのSLAと契約内容を確認する

現在利用しているサービスについて、SLAや利用規約を確認しましょう。

特に確認したいのは、次の項目です。

  • 稼働率についてどのような基準があるか
  • 障害時にどのような情報が提供されるか
  • 補償の対象と条件は何か
  • 補償の申請期限や必要な証拠は何か
  • データの取得・エクスポート方法はあるか

SLAの条件はサービスごとに異なります。

特に、複数の事業者が関わるシステムでは、障害時の問い合わせ先や責任分担も確認しておきましょう。

優先度3:最低限の業務を継続する方法を決める

例えば、クラウド型の在庫管理システムが停止した場合、直近の在庫情報を別の手段で確認できるでしょうか。

出荷業務に必要な情報が安全に取得できるなら、一定の範囲で業務を継続できる可能性があります。

ただし、古い在庫情報を使うことで誤出荷が発生する危険もあります。

そのため、障害時にどの業務を続けるか、どの業務は停止するかを明確にしておきましょう。

優先度4:バックアップと復旧方法を確認する

クラウドサービスを利用しているからといって、自社でのデータ保全を考えなくてよいとは限りません。

データのバックアップやエクスポートの仕組み、保存期間、復旧手順などを確認しましょう。

また、バックアップがあっても、それを使って実際に業務を再開できるとは限りません。

可能であれば、復旧テストも実施しましょう。

優先度5:障害発生時の連絡・判断体制を決める

システム障害が発生した場合に、誰がサービス提供事業者へ連絡するのか、誰が業務停止を判断するのかを決めておきます。

例えば、次のような役割分担です。

担当主な対応
IT担当者・保守会社障害情報の確認、技術的な切り分け
現場責任者業務への影響確認、代替運用
営業担当者取引先への連絡、納期調整
経営者事業継続や対外対応の最終判断

中小企業では、同じ人が複数の役割を担当する場合もあります。

それでも、障害が起きたときに何をすればよいか決まっているだけで、対応の混乱を減らせます。

障害を前提にすることは「サービス品質を諦めること」ではない

Design for Failureという考え方は、ともすると「障害が発生するのは仕方がない」と受け取られるかもしれません。

しかし、それは誤解です。

システム提供者には、高い信頼性を確保し、障害を減らす努力が求められます。

同時に利用企業も、サービスを利用することで生まれる業務上のリスクを把握しておく必要があります。

また、障害が起きた場合の説明責任や補償の問題は、設計上の信頼性とは別に考える必要があります。

つまり、

「障害を防ぐ努力」「障害が起きた場合の説明・補償」「障害が起きても事業を続ける準備」

この3つがそろってこそ、信頼できるシステム運用に近づくと考えられます。

まとめ|謝罪や補償だけでなく、事業を守る仕組みが重要

今回、日本企業と海外クラウドの障害対応について比較しました。

KDDIは大規模通信障害で謝罪と返金を実施し、GMOも不正アクセス問題で被害補償や代替サービスの提供を発表しました。

一方、AWSやAzureにも障害情報の公表、事後検証、SLAに基づく対応があります。

そのため、「日本企業は謝罪、海外企業は返金だけ」という単純な比較は適切ではありません。

むしろ重要なのは、サービス提供者が責任を果たすことと、利用企業が自社の事業を守ることを、別々に考えることです。

特に中小企業では、クラウドサービスを利用することが当たり前になっています。

その便利さを活用しながらも、万が一使えなくなった場合に、どのように仕事を続けるのかを考えておく必要があります。

謝罪してもシステムは復旧しません。しかし、システムが復旧しても説明責任がなくなるわけではありません。

重要なのは、両方の責任を果たしながら、障害による事業への影響を最小限に抑えることです。

まずは自社が利用しているクラウドサービスを一覧にし、「明日使えなくなったらどうするか」を一つずつ確認してみましょう。

参考資料・公式情報

※本記事は2026年11月3日時点の公開情報をもとに作成しています。SLAの内容や補償条件は、契約・サービス・利用形態により異なります。

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