「工場の温度や圧力を、担当者が毎日確認して記録している」
「設備の数値を紙に記入し、後からExcelへ入力している」
食品工場では、設備の稼働状況や製造条件を記録する作業が日々発生します。
2026年10月27日、クラスメソッドは、森永乳業の工場データ活用基盤と電子帳票化に関する導入事例を公開しました。
森永乳業では、設備から温度や圧力などのデータを自動収集し、電子帳票へ反映する仕組みを構築しています。
国内工場への展開により、年間約5,000枚の紙帳票削減と800時間超の作業時間削減を見込んでいます。
これらは全工場への展開を前提とした見込み値であり、達成済みの実績ではありません。
今回は、工場のデータ自動収集の仕組みと、中小食品工場が参考にできる取り組みを解説します!
森永乳業の工場DXでは何が変わった?
DX担当 ちゃま男先輩!工場のデータを自動で集められるなら、点検記録を手書きする必要がなくなるんですか?
ちゃま男の先輩設備から取得できる数値については、記録作業を減らせる可能性があるよ。
ただし、人が目で確認する検査など、すべての作業を自動化できるわけではないんだ。
設備データを自動で収集する仕組み
今回の取り組みでは、工場の設備から取得したデータを、AWSなどのクラウド技術を活用して蓄積・利用する仕組みを構築しています。
例えば、温度や圧力などの数値です。
従来は担当者が計器を確認し、紙の帳票へ記録していた作業を、自動収集したデータで補うことができます。
電子帳票への反映で転記作業を削減
取得したデータを電子帳票へ反映することで、同じ情報を繰り返し入力する負担を減らせる可能性があります。
このような仕組みは、単なるペーパーレス化にとどまりません。
製造時の条件をデータとして蓄積し、後から品質管理や工程改善に活用する基盤にもなります。
年間5,000枚・800時間超はどのような数字?
今回の発表では、国内工場への展開による削減見込みとして、次の数字が紹介されています。
| 項目 | 発表された内容 |
|---|---|
| 紙帳票の削減 | 年間約5,000枚を見込む |
| 作業時間の削減 | 年間800時間超を見込む |
| 展開範囲 | 国内工場への展開を計画 |
| 展開目標 | 2029年3月期末まで |
今回の数値は、全工場で削減効果が確定したという意味ではありません。
実際の効果は、各工場の設備構成や現在の業務内容によって異なります。
中小食品工場でも設備データを自動収集できる?
設備データの自動収集というと、大企業だけが導入できる高価なシステムを想像するかもしれません。
しかし、最初から工場全体のデータを収集する必要はありません。
例えば、温度管理を行っている一つの設備から検討する方法があります。
まずは記録するデータを整理する
設備から取得できるデータと、人が入力する必要があるデータを分けて考えましょう。
例えば、温度・圧力・電流などは、設備や計測器の仕様によって自動取得できる場合があります。
一方、清掃状態や製品外観など、人の判断が必要な記録もあります。
設備と製品・ロット情報をつなぐことが重要
取得した温度データだけを蓄積しても、それがどの製品の製造時に記録されたものかわからなければ、
品質管理への活用が難しくなります。
設備番号、製造日時、製品コード、ロット番号などの情報と関連づけることが重要です。
関連サービス|まずは現場の記録業務を電子化する
森永乳業のような設備データの自動収集を目指す場合でも、いきなりすべてを自動化する必要はありません。
まずは、現在紙やExcelで管理している製造記録・品質記録・設備点検表を電子化する方法があります。
ラック・インターナショナル株式会社では、i-Reporterを活用した現場帳票の電子化を支援しています。
既存のExcel帳票をもとにタブレット入力へ移行し、記録したデータの共有や集計、他システムとの連携を段階的に進めることができます。
設備データの自動取得と組み合わせる場合は、計測器・PLC・通信方式などの仕様を確認したうえで、実現方法を検討する必要があります。

設備データを集めた後は「活用できる仕組み」が必要
工場のデータを自動収集しても、蓄積するだけでは業務改善につながりません。
例えば、製造実績や品質記録、設備の稼働情報を関連づけて分析することが重要です。
現場の情報を一元管理する
食品工場では、製造情報、品質検査、在庫情報などが別々のシステムで管理されている場合があります。
例えば、kintoneのような業務プラットフォームを活用し、必要な業務情報を関連づける方法もあります。
重要なのは、何のためにデータを集めるのかを明確にすることです。
関連サービス|製造現場のDXを段階的に支援
ラック・インターナショナルでは、i-Reporterやkintoneなどのノーコードツールを活用し、現場データの記録・管理・活用を支援しています。
紙帳票の電子化だけでなく、業務アプリの構築や運用支援なども含め、自社の業務に合った仕組みを検討できます。

中小食品工場が取り組みたい4つの準備
① 記録に時間がかかっている業務を把握する
まず、温度や圧力などの記録にどのくらい時間がかかっているかを測定します。
転記作業の回数や集計時間も確認しましょう。
② 設備からデータを取得できるか確認する
計測器やPLCなどの型式、通信方式、既存ネットワークなどを整理します。
設備メーカーやIT担当者と相談し、どのデータを取得できるか確認しましょう。
③ データをどの業務に使うか決める
例えば、品質異常の確認、製造条件の比較、設備の状態分析などです。
用途が明確でなければ、データを集めても十分に活用できない場合があります。
④ 一つの設備や製造ラインから試す
最初から大規模なシステムを導入するのではなく、小さく検証しましょう。
作業時間の削減だけでなく、データの正確性や通信障害時の対応も確認することが重要です。
まとめ|食品工場DXは「記録の電子化」から「データの自動収集」へ
今回の森永乳業の事例は、設備データの自動収集と電子帳票を組み合わせ、現場の記録業務を改善する取り組みです。
国内工場への展開によって、年間約5,000枚の紙帳票削減と800時間超の作業削減が見込まれています。
ただし、中小食品工場が最初から同じ規模の仕組みを導入する必要はありません。
まずは記録業務を整理し、電子化できる部分と自動化できる部分を見極めることが重要です。
そのうえで、製造記録・品質データ・設備データを関連づけ、継続的な改善に活用していきましょう。

参考資料
※本記事は2026年11月3日時点の公開情報をもとに作成しています。

