「設備の点検は毎日行っているのに、故障は突然発生する」
「点検記録は残しているけれど、ほとんど見返していない」
製造現場では、このような悩みを抱えている企業も多いのではないでしょうか。
2026年10月29日、八千代ソリューションズは、設備管理システム「MENTENA」に、日常点検データから設備の劣化傾向を予測する新機能を発表しました。
第一弾として、空調設備の電流値を対象に、2026年11月から提供開始予定です。
今回注目したいのは、日々の点検で蓄積してきたデータを、将来の設備保全に活用できる可能性が広がっていることです。
今回は、DX担当ちゃま男と先輩の会話を交えながら、新しい設備劣化予測技術の仕組みと、中小製造業が今から準備しておきたいことを解説します!
設備の劣化を予測する「MENTENA」の新機能とは?
DX担当 ちゃま男先輩!日常点検のデータから、設備が故障する時期までわかるようになるんですか?
ちゃま男の先輩故障する日をピンポイントで当てるわけではないよ。
点検データから、設備が将来どのくらい劣化している可能性があるかを予測する仕組みなんだ。
過去の点検データから将来の状態を推計
MENTENAの新機能では、日常点検で取得した測定値から設備の状態を分析します。
設備の状態を「健全」「注意」「警戒」「危険」などの段階に分類し、将来どの状態になる可能性が高いかを統計的に推計します。
この予測には、京都大学と八千代エンジニヤリングが研究を進める「多段階マルコフ劣化ハザードモデル」が活用されています。
名称は少し難しいですが、簡単にいえば、これまでのデータから設備の状態変化の傾向を調べ、今後の劣化を予測する技術です。
約1万5,000件の実データで検証
今回の発表によると、第一弾は空調設備の電流値を対象としています。
約1万5,000件の実データを用いて検証し、劣化傾向を算出できることを確認しています。
ただし、約1万5,000件という数字は検証に利用したデータ件数です。
すべての設備で同じ精度の予測ができるという意味ではありません。
また、今回の技術は特定の故障日を断定するものではなく、中長期の保全計画や設備更新の判断を支援するものです。
出典:MENTENA公式|点検データによる設備劣化予測機能の発表(2026年10月29日)
なぜ設備の劣化予測が注目されているのか?
製造業では、設備が停止すると生産や納期に影響を与える可能性があります。
特に重要な設備で突然の故障が発生すると、部品調達や修理までに時間がかかることもあります。
設備保全には、大きく分けて次のような考え方があります。
| 保全方法 | 内容 |
|---|---|
| 事後保全 | 故障が発生してから修理する |
| 予防保全 | 一定の期間や稼働時間を基準に点検・交換する |
| 状態基準保全 | 設備の状態を見ながら点検・交換時期を判断する |
| 予知保全 | 設備データを分析し、異常や劣化の兆候を捉えて対応する |
今回の技術は、設備の状態を踏まえて、保全の優先順位を判断するための新たな選択肢と考えられます。
特に重要なのは「今あるデータ」を活用できること
設備の故障予測というと、高価なセンサーを新しく設置するイメージがあるかもしれません。
しかし、今回のMENTENAの発表では、新たな高頻度センサーの設置を前提とせず、日常点検のデータを活用することが特徴として紹介されています。
例えば、設備の電流値や圧力などを定期的に記録している場合です。
それらのデータが継続的に蓄積され、測定条件が整理されていれば、将来の分析に活用できる可能性があります。
DX担当 ちゃま男じゃあ、今まで紙に書いていた点検記録も、役に立つかもしれないんですね!
ちゃま男の先輩そうだね。
ただし、紙のままだと集計や分析に手間がかかるから、データとして使える状態にすることが大切なんだ。
中小製造業が最初に取り組むべきことは「点検記録のデジタル化」
最新の予測技術を導入する前に、まず確認したいことがあります。
それは、自社の設備点検データが、あとから集計・分析できる状態になっているかということです。
例えば、次のような状況ではないでしょうか。
- 設備点検表を紙で記録している
- 記録した紙をファイルに保管している
- 過去の測定値を比較するのに時間がかかる
- 設備の修理履歴が担当者ごとに分かれている
- 点検記録と故障履歴がつながっていない
こうした状態では、AIを導入する前のデータ整理に大きな負担がかかる可能性があります。
点検記録を電子化する方法
例えば、これまで紙で記録していた点検表を、タブレット入力へ変更する方法があります。
設備番号、点検日時、測定値、異常の有無などを決まった項目として記録することで、後から設備ごとの変化を確認しやすくなります。
ただし、単純に紙の帳票を電子化するだけでは十分ではありません。
測定値の単位、設備番号の付け方、入力ルールなどを統一することも重要です。
関連サービス|i-Reporterで設備点検記録を電子化
ラック・インターナショナル株式会社では、電子帳票システム「i-Reporter」を活用した設備点検表の電子化や、現場への導入・運用支援を行っています。
現在使用している紙・Excelの点検表をもとに、タブレットで入力できる帳票を構築し、入力内容の蓄積や集計、他システムとの連携を進めることが可能です。
設備保全のデータ活用を始めるうえでは、まず現場の点検情報を正確に収集できる状態にすることが重要です。

点検データを蓄積したら、設備台帳や修理履歴とつなげる
点検記録を電子化した次に考えたいのが、設備情報の一元管理です。
例えば、ある設備で電流値に異常が見つかったとします。
そのとき、過去の点検記録だけでなく、次のような情報も確認できると便利です。
- 設備のメーカー・型式・設置年月
- 過去の故障履歴
- 修理した日付と対応内容
- 交換した部品
- 定期点検の予定
- 点検・修理の担当者
これらを別々のExcelや紙で管理していると、必要な情報を探すだけでも時間がかかってしまいます。
設備台帳・点検履歴・修理履歴を一元管理する
例えば、kintoneのような業務プラットフォームを使い、設備台帳と点検・修理履歴を関連づける方法があります。
設備ごとの履歴を確認できれば、異常の発生傾向や修理の頻度などを把握しやすくなります。
また、点検予定と実施結果を管理することで、定期点検の実施漏れを防ぐ運用にもつなげられます。
これは、AIによる故障予測そのものではありません。
しかし、将来的にAIで設備データを分析するための情報基盤を整えるという意味で重要な取り組みです。
関連サービス|kintoneを活用した設備保全管理
ラック・インターナショナルでは、製造業の業務に合わせたkintoneアプリの構築や、導入後の運用支援を行っています。
例えば、設備台帳、点検履歴、修理履歴、点検計画などを管理する仕組みを、自社の業務に合わせて構築する方法が考えられます。
現場で取得した点検データを、管理部門での情報共有や改善活動に活用するためのシステム設計も重要です。

中小工場が設備データをAI活用につなげる4つのステップ
それでは、具体的に何から取り組めばよいのでしょうか。
ステップ1:設備台帳を整備する
まずは、工場で使用している設備の情報を整理しましょう。
設備番号、設備名、メーカー、型式、設置場所、管理担当者などを一覧にします。
最初からすべての設備を対象にする必要はありません。
停止すると生産への影響が大きい設備から始める方法がおすすめです。
ステップ2:点検項目と記録方法を統一する
次に、日常点検で記録する内容を整理します。
例えば、電流値、温度、圧力などです。
その際には、測定単位、測定時刻、測定場所などを統一することが重要です。
同じ設備でも測定条件が異なれば、過去のデータを正確に比較できない場合があります。
ステップ3:点検履歴と修理履歴を関連づける
設備台帳と点検結果、故障・修理の記録を関連づけます。
例えば、過去の点検値と故障発生時期を比較できるようにしておくと、設備の状態変化を分析する材料になります。
この段階で、設備ごとの異常発生回数や停止時間を集計するだけでも、保全活動の改善につながる可能性があります。
ステップ4:蓄積したデータから予測活用を検討する
十分なデータが蓄積されたら、設備の状態分析や劣化予測などを検討します。
ただし、AIを使えば必ず高精度な予測ができるわけではありません。
対象となる設備、必要なデータ量、測定条件、過去の故障履歴などによって、予測の実現可能性は異なります。
まずは対象設備を絞り、実際の履歴と照らし合わせながら小さく検証することが重要です。
DX担当 ちゃま男なるほど!いきなりAIを入れるんじゃなくて、設備の情報を整理して、点検データをためていくことから始めればいいんですね!
ちゃま男の先輩その通り。
AIの技術が進化しても、会社の中に使えるデータがなければ十分に活用できないんだ。
だから、今のうちからデータを整備しておくことに意味があるんだよ。
自社はAIを活用できる状態?まずは準備状況を確認しよう
設備の劣化予測に限らず、製造業でAIを活用するためには、データの記録・整理・活用ルールが重要です。
ラック・インターナショナルでは、製造業のAI活用に向けた準備状況を確認できる「AI READY診断 for 製造業」を無料で公開しています。
データ化・構造化・言語化などの観点から、現在の状況や改善すべき課題を確認できます。
全10問・約3分・会員登録不要で利用できる簡易診断です。

※本診断は独自の簡易セルフチェックであり、設備の劣化予測が実現できることやAI導入効果を保証するものではありません。
まとめ|設備の劣化予測を実現する第一歩は、日々の点検データにある
今回のMENTENAの発表は、日常点検で蓄積してきたデータを、将来の設備状態の予測や保全計画に活用する新しい取り組みです。
第一弾では空調設備の電流値を対象に、約1万5,000件の実データで劣化傾向を推計できることを確認しています。
一方、すべての設備で同じ予測ができるわけではなく、故障する日を断定する技術でもありません。
中小製造業が今から取り組むべきなのは、まず点検記録を使えるデータとして蓄積することです。
そして、設備台帳や修理履歴を整理し、必要な情報を関連づけていくことが重要になります。
AIを導入することが目的ではなく、設備の安定稼働と保全業務の改善につなげることが本来の目的です。
まずは自社の設備点検記録が、どのような形で保管されているのか確認してみましょう。
参考資料
※この記事は2026年11月3日時点の公開情報をもとに作成しています。設備の予測機能の提供状況や適用対象は、メーカーの最新情報をご確認ください。

