「製造現場でもAIを活用したい」
「品質管理や設備保全にAIを使えないだろうか」
食品製造業でも、AIの活用に対する関心が高まっています。
しかし、AIを導入することと、実際の業務で成果を出すことは別です。
2026年10月29日、ロックウェル・オートメーションは、食品・飲料メーカーのAI活用に関する調査分析を公表しました。
調査対象企業の約90%がAIや機械学習を導入済み、または近い将来の導入を計画している一方、
収集したデータのうち有効活用できている割合は約45%と回答しています。
この数字は海外を含む調査結果であり、日本の食品メーカー全体の状況を示すものではありません。
今回は、DX担当ちゃま男と先輩の会話を交えながら、AI導入が進んでもデータ活用に課題が残る理由と、中小食品工場が今から取り組むべきことを解説します!
食品・飲料メーカーのAI導入はどこまで進んでいる?
DX担当 ちゃま男先輩!食品メーカーの約9割がAIを導入しているんですか?
思っていたより多いですね!
ちゃま男の先輩少し注意が必要だよ。
約9割という数字は、すでに導入した企業と、近い将来に導入を計画している企業を合わせた割合なんだ。
それに、日本の食品メーカーだけを調べた数字ではないんだよ。
約90%は「導入済み・導入計画あり」の合計
今回の調査は、ロックウェル・オートメーションが公表したスマートマニュファクチャリング関連の調査結果に基づくものです。
対象となった食品・飲料メーカーでは、AIや機械学習の導入・導入計画が広がっていると報告されています。
一方、データの活用状況には課題が残っています。
| 調査項目 | 発表された内容 |
|---|---|
| AI・機械学習を導入済み、または導入計画あり | 約90% |
| 収集したデータのうち有効活用できている割合 | 約45% |
| 調査対象 | 海外を含む食品・飲料メーカー |
ここでいう約45%はAIの予測精度や成功率ではなく、企業が収集したデータをどれくらい有効活用できているかという回答です。
出典:ロックウェル・オートメーション公式|食品・飲料メーカーのAI活用調査
なぜAIを導入してもデータ活用が進まないのか?
AIを活用するためには、分析に必要なデータが整理されていることが重要です。
しかし、食品工場では製造記録、品質管理、設備保全、在庫管理などの情報が、別々に管理されている場合があります。
① 記録が紙やExcelに分散している
例えば、製造数量は紙の日報、品質検査はExcel、設備の故障履歴は別の管理表で記録している場合です。
情報が分散していると、関連するデータを集めるだけでも時間がかかります。
② 同じ項目でも入力方法が異なる
例えば、同じ設備について「充填機1号」「充填1」「F-01」と異なる名前で記録している場合です。
人が見れば同じ設備だとわかっても、システムが自動で正しく集計するにはルールの整理が必要になります。
③ 製造データと品質データがつながっていない
例えば、ある製品で品質不良が発生したとします。
不良件数はわかっていても、どの設備で、どのロットを、どのような条件で製造したかを確認できなければ、原因分析が難しくなります。
④ AIで何を改善したいのかが明確でない
「AIを導入したい」という目標だけでは、具体的な業務改善につながりにくくなります。
例えば、歩留まりの改善、不良率の低減、設備停止時間の削減など、改善したい指標を明確にする必要があります。
DX担当 ちゃま男なるほど。AIを使う前に、現場のデータが整理されているかが重要なんですね。
ちゃま男の先輩その通り。
AIの性能が高くても、元になるデータが使いにくい状態なら、十分な効果を出すのは難しいんだ。
自社はAIを使える状態?まずは準備状況を確認しよう
AI活用を検討している中小製造業では、最初から高価なAIシステムを導入する必要はありません。
まずは、自社の業務やデータがどのような状態なのか確認することが重要です。
例えば、次のような項目です。
- 現場の記録がデータ化されているか
- 品番や設備名などが統一されているか
- 部門をまたいでデータを利用できるか
- 作業手順や判断基準が整理されているか
- AIを導入して改善したい業務が明確か
こうした項目を確認することで、AI導入以前に取り組むべき課題が見えてくる可能性があります。
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食品工場ではITとOTの連携も重要になる
製造業では、ITとOTという2つの領域があります。
ITは、受発注や在庫管理、会計などの情報システムです。
OTは、製造設備や制御システムなど、現場の機械を動かす技術です。
例えば、製造設備の温度・稼働時間と、生産管理システムの製品・ロット情報を関連づけることができれば、製造条件と品質の関係を調べる材料になります。
ただし、工場の制御ネットワークを無計画に社内LANやインターネットへ接続することは避ける必要があります。
設備メーカーやIT・セキュリティ担当者と協力し、安全な構成を検討することが重要です。
中小食品工場がAI活用に向けて取り組む5つのステップ
① 改善する業務を一つ決める
例えば、不良率の低減、原材料ロスの削減、設備停止時間の短縮などです。
まずは効果を測定しやすい業務を選びましょう。
② 必要なデータを洗い出す
製品コード、ロット番号、設備番号、製造日時、測定値、品質判定など、必要な項目を整理します。
③ 記録方法を統一する
品番、単位、日付、入力ルールなどをそろえましょう。
紙やExcelを使っている場合でも、ルールの標準化から始めることができます。
④ データを集約して見える化する
AIを導入する前に、ExcelやBIツールなどを使って、データを集計・可視化してみましょう。
この段階で、元データに問題がないか確認することが重要です。
⑤ AIによる分析や予測を小規模に検証する
データが整理されたら、品質不良の傾向分析や設備の劣化予測などを検討します。
AIによる予測精度だけでなく、実際の改善効果や運用負担を確認しましょう。
関連サービス|現場データの電子化・一元管理から始めるDX
食品工場のAI活用では、紙やExcelに分散している情報を、使いやすいデータとして整理することが重要です。
ラック・インターナショナルでは、i-Reporterやkintoneなどを活用し、現場データの電子化、業務アプリの構築、運用支援を行っています。
例えば、製造記録や品質記録を電子化し、設備情報や在庫情報と関連づけて管理する仕組みなどを検討できます。
まとめ|AI導入より先に、データを活用できる環境を整える
今回のロックウェル・オートメーションの調査では、AI導入への関心が高まる一方で、収集データを十分に活用できていないという課題が示されました。
この結果は、日本の食品メーカー全体を示すものではありませんが、中小製造業がAI活用を考えるうえでも参考になります。
AIを導入して成果を出すためには、現場の情報を正しく記録し、関連づけ、改善活動に活用できる状態にすることが重要です。
AIを導入することを目標にするのではなく、自社の業務を改善するために必要なデータ基盤を整えること。
それが、食品工場のAI活用を進めるための現実的な第一歩です。
参考資料
※本記事は2026年11月3日時点の公開情報をもとに作成しています。

